熱処理とは

 調質 

概要
焼入れと高温焼き戻しを組み合わせた熱処理であり、JISでは「焼入れ後、比較的高い温度(約400°C以上)に焼き戻して、トルースタイトまたはソルバイト組織にする操作」と説明されています。 つまり、細かい焼き戻しマルテンサイト組織(トルースタイトまたはソルバイト)にすることにより、後処理がしやすくなるので精密機械加工を行う前の処理として多く用いられています。
目的
組織の均一化や硬さを調整し、機械加工を容易にさせ、ひずみの少ない製品を作ることを主目的とした熱処理です。

 焼ならし 

概要
言葉の通り、「ならし」つまり組織を均一にする熱処理のことをいいます。 以前は「焼準」といったので、古い図面や書物ではこの表現が用いられていることもあります。
目的
焼きならしは圧延などの加工による硬さむらや残留応力を除去し、粗大化した組織の微細化、組織の均質化、機械的性質の向上などを主な目的としています。
焼入れや焼きなましの前処理としても広く用いられています。
低炭素鋼の場合には被削性を向上させるためにも焼きならしが使用されています。
また、大型鍛造品や鋳造品では質量効果や変形のため、焼入れ・焼き戻しができないが、焼きならしでは機械的性質が改善でき、割れや変形などの危険が少ないので、焼きならしが用いられています。

 焼なまし 

概要
「なまし」は字の通り、軟らかくすることを意味しています。以前は「焼鈍」と表記し、「しょうどん」と呼んでいましたので、現在でもこの言葉がよく使われています。
目的
焼きなましの主目的は、鋼を軟化させて機械加工や塑性加工を容易にさせることにあります。組織の均質化、残留応力の低減、物理的性質の向上も目的としてはあります。

 固溶化 

概要
合金元素が固溶する温度以上に十分に鋼を加熱して炭化物や金属間化合物などの析出物を固溶させた後、急冷して過飽和固溶体を得る熱処理方法のことをいいます。
SUS304鋼などのオーステナイト系ステンレス鋼が、この熱処理の適用される代表的鋼種系です。
目的
オーステナイト系ステンレス鋼など、均一な固溶体にすることによって安定した組織とし、延性、じん性、耐食性、耐熱性を向上させることを目的とします。
同時に再結晶も伴うため、軟化や内部応力の除去も行われます。

 歪取り 

金属熱処理では、「応力除去焼鈍(おうりょくじょきょ しょうどん)」や「歪み取り焼鈍(ひずみとりしょうどん)」という言葉が一般的に使われます